インタビュー

キックボクシング初挑戦、”求道者”菊野克紀インタビュー「慣れないルールでT-98選手という化け物に挑戦するから面白い」

6月8日(金)後楽園ホールにて開催される『KNOCK OUT 2018 SURVIVAL DAYS』。豪華カードが目白押しの今大会の中、異色の対戦カードとして菊野克紀が出場し、”ムエタイゴリラ”T-98と対戦する。

菊野といえば三日月蹴りをはじめ空手で培った技を武器にMMAでKOを量産し、世界最高峰のUFCにも参戦。その後、異種格闘技『巌流島』や、東京オリンピック出場を目指しテコンドーに挑戦するなど、格闘技の求道者として様々な競技に取り組んできた。

そして今回、新たにKNOCK OUTに参戦し、70kg級日本最強との呼び声高いT-98と対戦が決定。この注目の一戦を控え、行われたインタビューの模様を掲載する。

「慣れないルールでT-98選手という化け物に挑戦するから面白い」

ーー菊野選手にとって、人生において格闘技を追求するというのはどういう意味があるのでしょうか?

僕はもともと泣き虫の弱虫のビビリなんですね。だからそれで凄く格好悪い思いとか、情けない思いを一杯してきたので、強くなりたいという願望が凄くありますね。それが未だに続いているんだと思います。

ーーそもそも格闘技を始めたキッカケというのは強くなりたいというところからですか?

そうです。僕は心が弱かったので、自分より強いやつにはビビるけど、弱いやつにはイバるという本当に格好悪いヤツで、それが原因でみんなから嫌われて無視されて、孤独な時期もありました。だから心身ともに強くなって、自分のことが好きになりたかったんです。

中学から柔道部に入って、柔道やってちょっとずつ強くなって、強くなって自信がついてきて、自信がつくと人に優しくできるようになって、そうなると(皆と)仲良くなって楽しくなるという。今も楽しく幸せに生きているので、強くなるというのは僕の人生にとって大事なことですね。

ーー様々な競技を経験して強くなられたわけですけど、色々なことを吸収しようと思うようになったキッカケはなんですか?

一つは強くなるということのために、色々なことを挑戦するのはとても有意義ですし、面白い。面白いことじゃないとできないですね。

強くなることも格闘技自体も面白いのからやっていますし、僕はもう36才になって相手に勝つことや一番になることや、自分との戦いも一生懸命目標に向けて頑張ってきて、一通り欲求が落ち着いた感があるんです。

だから今何かを一生懸命頑張ろうと思ったときに、面白いか自分の夢や思いに直結してないとエネルギーが出ないんですよ。だから色々なことに挑戦するのは面白いですし、自分の思いに合うなというものには挑戦してますね。

ーーアスリートとして若くはない年齢ですが、まだまだ競技者として強くなっているという実感はありますか?

間違いなく今が一番強いですね。ありがたいことに僕が今学んでいる沖縄拳法空手というのは、競技ではなく武術なんですね。歳を重ねても強くなれる、パワーやスピード、スタミナではなくて、フォームであったり体の使い方、色々な要素で今強くなっているので、僕にとって希望ですね。

ーー菊野選手の師匠はある程度年齢を重ねていると思いますが、今でもやはり強いのでしょうか。

僕の先生はまだ41才くらいで若いんですけど、その先生に一発パンチをもらったときに死ぬかと思ったので。今まで僕が喰らってきたパンチとは全く別次元の突きを喰らってこれだと思いましたね。漫画(に出てくる)みたいな先生なので。達人というやつですね。

ーー菊野選手にとってこれからの格闘技人生はどのように描いていますか?

分からないんですよね、本当に。格闘技だからなのかは分からないですけど、先が本当に見えない、半年先もイメージが湧かない。

今の僕を1年前の僕は全く想像できなかったです。テコンドーに挑戦してることも想像できなかったですし、KNOCK OUTに出場することも想像できなかったし、本当に先が全く想像できなかったんですけど、面白いことをやっていきたいですし、挑戦していきたいです。

僕はヒーロー(になる)という夢を掲げているんです。もともとが格好悪い人間だったから、格好良いヒーローになりたいんですよ。だからそこに向かっていくような毎日を送っていきたいなと思っています。

ーー各分野で、MMAでは世界最高峰のUFCに挑戦されて、そんな中で改めてKNOCK OUTからオファーが来た時はどうでした?

単純にありがたいですし、嬉しいですね。小野寺(プロデューサー)さんとはもともとご縁もありましたし、自分を求めてくださるというのは凄く嬉しいですし、後は僕の状況があえばぜひという気持ちではあったので。

今回、巌流島が5月の大会が一度延期になったので、このタイミングならやれるなと思って、KNOCK OUTという素晴らしい舞台だったらやりたいなというのはありました。本当に色々なものが合いましたね。

ーーKNOCK OUTは肘ありのキックボクシングで初挑戦になると思いますが、どのように考えていますか?

僕も色々な競技に挑戦しているので、ルールの壁というのは物凄く感じていますね。練習でも当然キックボクシングルールの練習をするわけですけど、本当に難しいですね。

自分の今までやってきた技術が相当削られるんですよね。それでも例えば僕がキックボクシングの動きをやってもキックボクシングのトップの選手に勝てるわけがないんですよ。だから僕は僕の動きでキックボクシングのルールの中でやるしかなくて、今は必死にそこをもがいてますね。

このボクシンググローブというのが厄介ですし、寝技がないというのも厄介ですし。今、もがいてます。

ーー格闘技が面白いと言っていましたが、キックボクシングに挑戦というのはいかがですか?

挑戦というのは面白いですよね。怖いというのと面白いというのは裏表だと思うんですよ。何のストレスもリスクもないのは面白くないと思うんですよね。

慣れないルールに挑戦する、KNOCK OUTに挑戦する、そしてT-98選手という化け物に挑戦するというのは凄く怖いので。それに挑戦する自分というのは好きになれるわけですよ。そういう意味で楽しいです。

ーー今回T-98選手と菊野選手の対戦が発表された時にはドッと湧きました。皆さん、菊野選手のことを待ちわびていたかと思いますが、その声は届いていましたか?

待ちわびていたというよりは思いもよらなかったんでしょうね(笑)多分、菊野が参戦すると予測している人は一人もいなかったと思うので。それは僕の周りでもそうですね。多分小野寺さんだけだと思います。

皆さんがそういう反応をしてくれるというのはちょっと面白いなと思っていました。皆が面白がったり、ビックリしてくれるようなことを仕掛けるというのはプロとしてとても楽しいことですし、その上で無謀な挑戦だけだとそこまで面白くないと思うんですよね。

「菊野だったら何かやっちゃうんじゃないの」という期待感を持たせられるのかなと思うので、やってやりたいですね。

ーー色々な競技に挑戦されている菊野選手ですが、ムエタイはどのように見ていますか?

とても凄いなと。挑戦するとは思ってもみなかったし、見るものでした。K-1から僕は入っているので、キックボクシングというものには馴染みがありましたけど、ムエタイというとさらに深いところという感じがしますし、正直ムエタイというルールを理解できているかといえばそうではないですし。

今回、KNOCK OUTはKNOCK OUTのルールだと思うんですけど、そのルールもしっかり理解した上で自分の良さをちゃんと出さないとなと思っています。

ーームエタイは何百年という歴史がある競技で、日本人がちょっとやっただけではタイ人選手には敵いません。その技術はどのように見ていますか?

僕はちゃんと習っているわけではないのですが、歴史があるものには真実がありますし、タイでは多くの人がやるメジャーなものですよね。そういうものはレベルが高くなっていきますし、凄いと思います。

ーーそんな中、ムエタイの王者であるT-98選手と対戦するとなったときの感想はいかがですか?

おお、来たかと。「そうだろうな」とは思っていたんですよね。70kg級でKNOCK OUTに出るんだったら、T-98選手じゃないのかという話はあったので、やはりそうかと。でもどうせやるんだったら、怖い化け物とやりたいなというのがあるので、ありがたいですね。

僕は挑戦者ですけど、彼は訳の分からない空手家を迎え撃つわけで、リスクは彼のほうがあるわけですよね。本当にありがたいなと思います。

ーーT-98選手の印象はいかがですか?

まあ本当に…ゴリラですよね(笑)。体が強いし、心が強いし、パンチがキレて、ローキックで崩して、削って、肘や膝も首相撲も得意なので穴がないという印象ですね。彼を攻略するのは本当に大変だと感じています。

ーー菊野選手の今回のプランはありますか?

「僕らしく」。いかに自分の戦いをするかということだと思うんですよね。彼が彼のムエタイをしっかりやれるような状態になれば歯が立たないと思うので、僕が僕の戦いをできれば、ジャンケンのように違うことをやればどちらが勝つかは分からないので、違うことをやりたいと思います。

ーー判定になるとやっぱり菊野選手の分が悪いとは思うので、やはりKO決着にも期待してしまいます。

もちろんKOしたいと思ってますし、勝ちたいと思ってます。でもやっぱりKOや判定というのは結果なので、どれだけ僕がKOしてやろうと思っても結果はコントロールできないんですよ。むしろKOしてやろうと思って肩に力が入って全く効かないとか、そういった残念な思いをたくさんしてきているので。

その瞬間に集中して、僕を出せば結果は自ずとついてくるのかなという気持ちですね。

ーーKNOCK OUTは激しい試合が多いですが、今回のイメージはどのように持っていますか?

異種格闘技ですよ。ムエタイに空手が挑むという形になると思うので、面白いと思います。

ーー見ている方にここを見てほしいポイントはありますか?

これは結果でしか語れないんですけど、今世の中にある格闘技のプロ競技、ボクシングやキックボクシング、MMAもそうですが、プロではない武道や武術が世界中にあるわけですよね。カポエラやシラットとか、色々な武道・武術があってどれも素晴らしいんですよ。

とても素晴らしくてそれを一定のルールに当て込んだときに何が強いというのがあって、キックボクシングの中では当然キックボクサーが強いんですけど、こういう素晴らしいものがあるよというのが少しでも伝えられたら嬉しいですよね。

僕の場合は今、沖縄拳法空手というのを学んでいるので、沖縄拳法空手が素晴らしいですよというのを感じてもらえたら嬉しいですし、プロ競技の中で見ているものとは別のものが一杯あるということを知って欲しいです。

ーーテレビ放送などで初めて菊野選手を見る方もいると思いますが、三日月蹴りやパンチなどで一撃で倒す秘訣などがあれば教えてもらえないでしょうか。

これは色々な要素があるのですが、まずは単純な威力ですよね。「重たい」とか「キレ」といった威力です。それで人は分かっていれば耐えることができるんです。だから相手に分からない角度やタイミングで打つというのもそうですし、あとは当てるポイント。

急所に当てないと効かなかったり、先端を打てば脳が揺れるとか、肝臓などに的確な角度やタイミングで狙うということなど、色々な要素が絡み合ってKOできるので、それを稽古していくということです。

ーーT-98選手はキックボクシングをずっとやってきた選手なので、T-98選手が知らない角度から来る可能性も…。

間違いなく僕みたいなのとはやったことがないはずなので、それは嫌でしょうね。それが僕のアドバンテージというか、それしかないですね。

やっぱりルールの中では初めてのことで不利だと思うのですが、ただ僕とやる相手は僕みたいなタイプとやったことがないはずなので、それは物凄くリスクを背負ってもらうことになりますね。

ーー今回の理想のフィニッシュを教えて下さい。

理想のフィニッシュは無傷で、痛いのが嫌なので無傷でKOできたら良いですけど、まあそんなことは望んでません(笑)

ーーちなみにT-98選手は物凄い大食いなんですけど、菊野選手はどうですか?

僕は少食です(笑)。一人前で十分ですね。酒も弱いし、どちらかといえばスイーツ男子です。

ーースイーツ男子なんですね。

パフェとかクレープとか好きです。全然豪快な所はないです。

ーーたくさん食べられるのかなと思っていたので意外ですね。

全く、僕は少食ですね。僕は鹿児島出身なんですけど、凄く酒を飲むと思われて連れて行ってもらって残念がられるというのがいつもあります。人間的なそういう強さは持ってませんね。

弱いなりに強くなりたくて、だからこそですかね。弱いからこそ強くなりたくて積み上げてきたものがあるので、それでテコンドーでも通じていますし、今回キックボクシングにも通じると信じています。

ーー菊野選手のスタイルは世界でも唯一無二なので、どんな試合になるのか楽しみです。

そういう意味では僕も楽しみですね、どうなるんだろうと。ボクシンググローブで試合で本気で殴ったことがないんですけど、それで効くのかどうかはやってみないと分からないです。

ーー以前、自演乙選手とミックスルールで立ち技で戦いましたが、全く遜色ありませんでしたよね。

あれはオープンフィンガーグローブだからなんです。あれがボクシンググローブだったら負けていたかもしれないですね。そのくらいシビアなんですよ。攻撃面でも防御面でもクッションが多い分、打撃の利き方も当て方も変わりますし、沖縄拳法空手は素手を前提とした技術なので、重りがあることは凄く邪魔なんですよ。

素手やオープンフィンガーグローブではガードを固めるのはあまり意味を成さないんですよ。だけどキックボクシングルールではガードを固めると隙間もないので攻撃的な防御で、そこに打ち込むのは疲れるんですよね。相手を疲れさせる、スキを生ませるという効果もあって、攻撃も防御も全く違うものになるので、これを攻略するために今もがいてます。

ーー三日月蹴りは今みんながやるようになっていますが、プロ競技で使ったのは菊野選手が初めてではないでしょうか。

明確には分からないですけど、確かに盛り上がってくれましたね。2009年に(DREAMでの)アンドレ・ジダ戦、その前のDEEPでもやっていましたけど。極真空手では当たり前の技で、僕は極真空手の中では全然上手い方ではないんです。むしろ蹴ったことがないくらいです。

顔面へのパンチがなくてガードが低いので、肘を蹴っちゃって自分の足を痛めるということがあってよほど上手くないと蹴れないんですよ。僕は蹴れなかったんですけど、総合格闘技の中では顔面パンチやタックルがあって意識も散るので、隙間ができてくれて、だからそこに刺さって倒すことができた。

あとは皆に蹴りに対する耐性がないので当たったというのはあるので、僕は三日月蹴りの選手と言われると凄く恥ずかしくて、僕より上手い選手なんていくらでもいるんですけど、MMAの中で使ったのが僕だったというだけですね。

ーー今はプロ競技の中でも皆が使うようになってます。

いやあ…恥ずかしいです(笑)

ーーまだまだ武道の中に秘められた、プロ競技で使える技があるかもしれないと。

技というよりは原理ですかね。沖縄拳法空手でいえば真逆なんです、威力の出し方が。地面蹴って腰を捻って打つというのが当たり前だとするならば、全く地面を蹴らずに腰をひねらずに、手先だけ動かして重心を揃えて打って相手に伝える。

命が懸かっていて、弱かったら死ぬ時代があったわけで、国や家族、財産が奪われたりしていて、必死に強くならないといけなかった。その中で生まれた武術というのは知恵の塊で、天才たちがそのために一生懸命考えて作ったものなので、今の僕らがやっているスポーツとは次元の違う深みがありますよ。

それを競技で活かそうという人が現れたらそういうことが起こるかもしれないですね。基本的に目的が違うので、僕たちがやっているのはどちらかといえば自己実現や楽しいということですが、武術は護身術だとかそういうもので、目的が違うので、武術の人が競技に出たいかといえば全くそういう人たちではないので。そこに出たい人がいた時は面白いかもしれないですね。

僕は最初に競技から始めて、武術に価値を感じた人だから、(武術から競技というのは)難しいですよね。

ーーそんな日がいつか来るのが楽しみですね。

少しずつですけど、僕も武道・武術の素晴らしさを伝えていって、そこに興味を持ってくれる人が現れてきてくれたら楽しいですけどね。巌流島はそういうところがあるので、スポットを当ててくれて面白いです。

凄いおじさんたちが世の中には一杯いますよ。趣味でやっていると言っても、仕事をしながら毎日のようにキツイ稽古をされていて、試合には出ないけど凄く強いという人は一杯います。プロ格闘家は勝てないですよ。ルールがなかったらすぐにやられてしまうようなおじさんたちがたくさんいます。

ーーそんな凄い人たちをぜひ取材したいですね。

ぜひして欲しいですね。

KNOCK OUT 2018  SURVIVAL DAYS

◆日 時 2018年6月 8 日(金) 開場17:30 開始19:00
◆会 場 後楽園ホール
◆住 所 〒112‐0004 東京都文京区後楽 1−3−61 TEL:03-5800-9999
◆アクセス JR 総武線・都営地下鉄三田線「水道橋駅」、
地下鉄丸ノ内線・南北線「後楽園駅」から徒歩 4 分
◆主 催 RISE クリエーション(株)
◆共 催 (株)キックスロード
◆協 力 ぴあ(株) (株)RIKIX (株)ブシロード
◆協 賛 ダイヤモンドブログ AINEXX

◆入場料金 (消費税込み)
SRS ¥15,000(当日¥15,500)
RS ¥10,000(当日¥10,500)
S ¥7,000 (当日¥7,500)
A ¥5,000 (当日¥5,500)
立ち見 ¥4,000

2018 年 4 月 14日(土)より最速先行開始
2018 年 4 月 28 日(土)10:00 より一般販売開始

◆チケット発売所
チケットぴあ 0570-02-9999(P コード)
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b1801661
ぴあカウンター、サークルKサンクス各店、セブンイレブン各店

RIKIX 03-3718-2353
後楽園ホール5階事務所 03-5800-9999

KNOCK OUT 2018 SURVIVAL DAYS