「神童はコスチュームも進化を続けていく」那須川天心×FUEGO コスチューム対談 前編

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「神童はコスチュームも進化を続けていく」那須川天心×FUEGO コスチューム対談 前編

“神童”那須川天心の試合用コスチュームを製作している、大阪のコスチュームメーカー「FUEGO(フエゴ)」代表の淡野智彦さん。今回はコスチューム製作や入場のこだわりから、今後のコスチューム展開、またキック界の未来まで、たっぷりと語って頂きました対談を公開いたします!(前編)
進行/どら増田

・中学生にしてメキシコへコスチュームの飛び込み営業へ
・キックボクシングのコスチュームをカッコよく変革したい
・那須川天心はコスチュームも進化を続ける

KNOCK OUT FUEGO

中学生でコスチューム作成を初め、メキシコに飛び込み営業へ!?

-今回はコスチュームのお話をよろしくお願いします。現在は天心選手を中心にキックのコスチュームを作られている淡野さんですが、コスチューム職人になられたキッカケを教えてください。

淡野「偶然、僕が13歳のときに、プロレス雑誌で新日本プロレスの獣神サンダーライガー選手を見る機会がありまして、そのとき『何だこのカッコイイマスクとコスチュームは!』って衝撃を受けたんですね。そのあと、テレビでド派手にカッコイイ入場テーマ曲に乗って入場してくるライガー選手を見て、一気に魅せられて、最初はプロレスラーを目指しました。それでこれだけ派手なコスチューム着るならマスクマンになるしかないなって思って。当時、闘龍門がプロレス学校を作ってたので、これは行くしかないなと思ったんですけど、紆余曲折があって作る側になっちゃいました(笑)」

-最初はプロレスのマスクやコスチュームから始められたそうですが、もともと製作する知識はあったんですか?

淡野「全然なかったので、独学です。とりあえず選手のコスチュームを見て、見よう見まねで型紙を起こしていった感じですね。当時まだ13歳でした(笑)」

天心「13歳!スゴイっすね」

-そこからプロの選手にたどり着くまでには大変だったんじゃないですか?

淡野「そうですね。やはり独学でやってても埒が明かなかったんですよ。僕は直線ミシンもかけたことがなかったし、学校でも家庭科の課題は友だちに替え玉で作ってもらってたくらいで(笑)絶対にミシンなんか使えるわけないって思ってたんです。でも作りたいから、とりあえず母にミシンを買ってほしいとお願いしたら『ミシンなんかで何すんの?そんなもんいらんやろ!』と一蹴されて。そのやり取りを半年くらい続けたけど、結局ダメで。これは自分で買うしかないと思って、ミシン屋さんに行って見積りを出してもらったんですよ。そうしたら85,000円と言われて。中学生にとって85,000円はハードル高いじゃないですか。それでもコスチュームを作りたい一心で諦められずに、1年間新聞配達のバイトをやって85,000円貯めてミシンを買いました。でも買ったのはいいけど使いかたがわからないわけですよ(笑)何とか直線縫いはできるようになったんですけど、カーブの部分を縫うのに完全に行き詰まって…。そのとき、大阪にプロレスのマスクやコスチュームを作っているお店がオープンしたんですね。そこに『マスク作りたいんです』って行ったら受け入れてくれて、作っているところを見せてもらい、沢山吸収させてもらいました。1年くらい通ってたら形として作れるようになってきたので、そこから他の方が作るものを見て、模造したりして、良いものができるようになりました。そこで次に考えるのは、どうやったらプロの選手に使ってもらえるのか?ですよね。当然、はじめは何の実績もない中学生なんて日本人選手は全然相手にしてくれなかったんですよ。じゃあ海外に行くしかない。マスクマンといったらメキシコかなと思って、勝手にマスクとコスチューム一式持ってメキシコに行ったんですよ」

天心「へぇ~」

淡野「辞書で調べた拙いスペイン語で何のアポもなしに『着てくれ』って選手にお願いして回りました(笑)これは中3の春ですね」

淡野「最初はミステル・アギラという選手だったんですけど、使ってもらえたときは嬉しかったですね。それから日本でAAA(トリプレア=メキシコのプロレス団体)が日本でツアーをやるようになって、来日した選手の半分くらいのマスクとコスチュームを作ったんですよ。そのときに日本人選手も参戦されてたので、一気に営業をかけて。日本人選手のマスクやコスチュームを作るようになったのは、それからですね」

天心「最初に作った日本人のマスクマンはどの選手なんですか?」

淡野「ドラゴン・キッド選手(ドラゴンゲート)ですね。あとは大阪プロレスの選手等をやらせてもらいました」

那須川天心

キックボクシングのコスチュームをカッコよく変革したい

-プロレスのコスチュームメインだったFUEGOですが、現在はキックボクシングメインに移られたわけですけど、なぜ移られたんですか?

淡野「ドラゴンゲートさんの関係で、キックの試合を見させてもらったことがあるんですけど、思ってたよりシンプルなコスチュームだなあ…と思って。こんなにお客さんを沸かせる試合なら、コスチュームから華やかにして、もっと盛り上げてみたい!と感じたのがキッカケで、キックのコスチュームをやるようになりました」

-プロレスと大きな違いはありますか?

淡野「コスチュームがプロレスに比べてはシンプルなものが多い事と入場に派手な演出をしているパターンが少ない事です。そこを何とか変えたいですね」

-そんな思いでキックの製作を始められた淡野さんが代表を務めているFUEGOに、那須川天心選手からコスチュームの製作依頼が来たわけですが、天心選手がFUEGOに決めた理由を教えてください。

天心「僕はそういうのにまだ詳しくなくて、全部父がデザインとかも、こういう風にしたいと決めていて、いろんなメーカーを一緒に見てたんですよ。そうしたらFUEGOがでてきて、2人でここいいじゃん!っていう話になってお願いしました」

現時点では2セット作られましたけど、いかがですか?

天心「見てもらえればわかると思うんですけど、周りの選手と違うと思うんですよね。凄く派手というか、目立つので。他のメーカーのガウンは着れないかなって感じますよね」

那須川天心

-淡野さんは最初に依頼が来たときはどう思われましたか?

淡野「正直、そのときはまだネームバリューも…」

天心「そうですよね。デビューして6戦目のときにはじめてお願いしたので、まだベルトも獲ってないし、名前もなかったんですよ」

淡野「それでも関東からご依頼をいただきましたし、尚且つ岡本トレーナーも『必ず有名にさせます』と太鼓判をおしていたので(笑)依頼内容もウチで製作したプロレスのガウンを見て気に入って頂いて、キックでは珍しいパターンでしたし、興味をもって製作させて頂きました」

-実際、作られたコスチュームを着た天心選手を見られたときはいかがでしたか?

淡野「超感動ですね。それだけ作った甲斐がある選手が着ているので。普通じゃないオーラが漂ってるじゃないですか」

天心「嬉しい!」

FUEGO 那須川天心

那須川天心はコスチュームも進化を続けていく

-今まで作られた天心選手のコスチュームで、良かったなと思われる点を教えてください。

淡野「スパンコールは良かったですね。最初のときはスパンコールが入ってなかったので、2作目からスパンコールを入れたいという話だったんですけど、予算面で厳しい部分が多々ありまして(苦笑)そこは天心選手ということで、いろいろとがんばって(笑)でもスパンコールを入れて、結果的に良かったと思います」

-天心選手は1作目と2作目を比べてみていかがですか?

天心「僕は2作目のほうが好きなんですね。このキラキラ(スパンコール)が堪らない(笑)後から動画とか写真で見るんですけど、キラッキラしてて、強いて言うならもっと付けて欲しかったなって(笑)これは届いたと同時にテンション上がりましたからね。ボクシングの選手がスパンコール入れてるのを見て、いつかは入れたいなって思ってたので。でも岡本トレーナーに聞いたら『スパンコールは高いよ』って言われてたから、嬉しかったですね。でも1作目への思い入れもかなりあって、初めて僕に合うように型を作ってもらったんです。父が凄く拘りがあって、普通ロングのガウンだとそのまま直線的になっちゃうんですよね。それが型を取ってもらうことで、上は身体の線に沿って、下は開くんですよ。そういうところを見せたかったので」

-この開くというのはプロレスのガウンではよく見られますよね?

淡野「そうですね。プロレスから持ってきてます」

天心「キックの選手では見かけないので、そこは拘っていきたいですね」

淡野「そういう意味で、天心選手は見るところが違う。エンターテイナーですよね。キック業界自体が、まだコスチュームで魅せるというよりは試合内容のみ重視な風潮があるので。天心選手は違うなって感心しました」

-天心選手は入場シーンが盛り上がりますが、入場への拘りはありますか?

天心「特に意識はしてないんですけど、魅せるということは、けっこう意識してますね。試合前なので、『倒してやる』ということ以外、あまりいろんなことは考えられないんですけど、魅せることは大切なので、父と入場の練習しようか?って話したりはしてます(笑)父には入場がまだまだだって言われるんですよね。『もっと矢沢になり切れ』『矢沢が歩く真似をしろ』って(笑)でも入場のときに応援団だけにアピールする選手がいるじゃないですか。それじゃ盛り上がらないんですよね。入場から会場全体を煽って沸かして盛り上がれば、試合はもっと盛り上がるじゃないですか。自分なりに魅せるということは意識しながら入場してますね」

那須川天心

-淡野さんは天心選手の入場シーンを見ていかがですか?

淡野「もちろんカッコイイですよ!でも天心選手だからこそ、まだまだ進化していってほしいです!」

天心「自分でもそれは思います」

-コスチュームを作る立場としては、特にガウンは入場シーンが一番の見せ場なわけじゃないですか。入場シーンに対する淡野さんの拘りを教えてください。

淡野「派手さが一番大事だと思います。近くで見て派手だなと思っても、遠くで見たら派手に見えないとか、いつももっと違う提案ができたんじゃないかって思います。スパンコールにしてももっと使わないと、この距離で見たら派手ですけど、リングに入ったらただ光ってる程度にしか見えないんですよ。もっとやりようがあると思うので、その辺は回を増やす度に増やしていきたいですね」

-パンツに関してはいかがですか?

淡野「パンツに関してもガウンと同じく派手さを重要視してますが、試合中で使うものなので動きやすさや軽量化を同時に考慮します。派手さを追い求めると重さもでますし、生地も耐久性が悪くなったりするので、そこが難しいところです。もちろん、その全てを予算内で実現するというのが前提です。あと形をウチは洗練されたシルエットのパンツにしたいというのがあって、ここはまだ研究の余地がありますね」

-淡野さんのパンツへの拘りを聞いて天心選手はいかがですか?

天心「キックパンツも凄く派手なんですけど、全然動きに支障がないので、助かってますね。自分のパフォーマンスが全部だせているので問題ないです」

-今後、どんなコスチュームを着てみたいですか?

天心「夢は膨らみますよね。自分は派手なのが好きなので、レインボーとか着てみたいなって思ったこともあるんですけど(笑)最初、父に話したのは、僕はオレンジが好きなので、オレンジとか、真っ赤とか、青とか色がついたのがいいって言ったんですけど、それだと飽きやすいと言われて。それはどうなんですかね?」

淡野「そうですね。派手にすればするほど、飽きるのが早くなるかなとは思いますね」

天心「…そうですね(笑)今後、いろいろと作っていただくので、作っていただく度に段階を踏めたらいいなと思います」

淡野「コスチューム次第で選手のキック人生は、より魅力的なものに変える事が出来ると思うので」

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