伝わらなかったら意味はない ―もっと俺のことを知ってくれ― 不可思

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伝わらなかったら意味はない ―もっと俺のことを知ってくれ― 不可思

 

もっと俺のことを知ってくれ。
近頃、これほどギラギラした視線を投げかけてくるキックボクサーも珍しい。RISEライト級(63㎏以下)王者の不可、26歳。今回は両国国技館という大舞台での試合とあって、ギラギラ度はさらに増している。
「こんな大きな会場で試合をやるのは初めて。気持ちはいつもと変わらないけど、回を重ねるごとにKNOCK OUTを見るお客さんは増えている。
熱の広がりを感じますね」

 

取材は11月3日、渋谷で行われたファン感謝イベント後に行った。
イベントは女性ファンと子供が多数詰めかけ、大盛況だった。約1年前、同種のイベントを開いた時にはこれほど多くのファンは集まらなかったというから、この1年でKNOCK OUTは大きな進化を遂げたといっていい。ファンと直接接することができた不可も上機嫌だった。
「こういうイベントをやって全然人が来なかったら悲しいけど、いっぱいだったので本当にうれしかった」
イベント会場へ行く道すがら、乗り換えのために降り立った新宿駅ではホームに両国大会の告知ポスターがデカデカと貼られていた。選手にとって、これほど大きな励みになることはない。不可はポスターに掲載されている自分の写真とともに写メを撮り、SNSにアップした。
「今日初めて見たけど、すげぇなといました。将来的にKNOCK OUTには地上波のゴールデンタイムで放送するくらいの大会になってほしい」
最近は街角で声をかけられることも多くなった。所属ジムのある吉祥寺で初めてのお店に入ったら、「あっ、不可」と驚かれた。渋谷で声をかけられたこともあったという。
「KNOCK OUTのおかげかどうかわからないけど、僕のことを知っている人は確実に増えていると感じました」

 

不可はリングネーム。御経の一節で「計り知れない」という意味がある「南無不可議光」が由来だ。名古屋でお寺を営む父親が命名した。母親はタイ人で、実家には日本式とタイ式の仏壇がひとつずつある。かつて名古屋に住んでいた頃、日本の仏壇にだけ手を合わせて会場に出かけようとすると、母親に「タイの方にもちゃんと手を合わせなさい」と諭されたという。
心配症の母親は不可と会うたびに「いつ引退するの?」と聞いてくる。
そのたびに不可は突き放す。
「いやいや、俺はまだやるから」
KNOCK OUTには2月12日の『vol.1』から参戦。4戦3勝(3KO)1敗という好戦績を残す。2017年は2カ月に一度のペースでリングに上がった。不可は、おかげで以前のように夜遊びしなくなったと笑う。
「昔の自分では考えられないくらい遊んでいない。でも、そのおかげで結果は出ているので、それはそれで良かったとう。家族がいたら、バカはできないじゃないですか」
KNOCK OUTで不可が最も存在感を示した一戦──それは計6度に及ぶダウンの応酬となった勝次とのKING OF KNOCK OUT初代ライト級王座決定トーナメント一回戦だろう。
「こんなのありかよ」
あの日、会場に集まった大観衆は誰もがそうったのではないか。2R開始早々、先制のダウンを奪われた不可は立て続けにダウンを2度奪い返した。ポイント的にはリードしたのでその後は流すことも可能だったとうが、それをよしとしなかった。

 

もっとも、その代償は大きく、その後勝次に3度ダウンを奪い返され、5RにTKO負けを喫した。「いまは全然振り返ることがないけど」と前置きしながら、不可はキック史に名を残した一戦について語り始めた。
「トーナメントで優勝して、KNOCK OUT中心でやろうとっていたけど、負けてしまった。そこで辞めるならいいけど(現役を)続けるわけだから、気持ちは切り換えるしかない。さすがにすぐに切り替わることはなかったですけどね」
試合直後の控室。タオルをかぶったまま肩を小刻みに震わせる不可の姿をテレビカメラは追い続けた。この一戦にどれだけの想いをかけていたかが如実にわかるシーンだった。激闘の代償は大きく、あの一戦で鼻骨を骨折し、全治一カ月という診断を受けた。
「翌日病院に行ったら折れているけどまっすぐ折れているので矯正する必要はないと。ラッキーといましたね(微笑)。いまはもう全然(鼻の具合は)大丈夫です」

 

トーナメントに出場するにあたり、不可は過酷な減量とも向き合った。ボクシング同様、KNOCK OUTのライト級は61.5kg以下に設定されているが、不可の適正体重はひとつ上のスーパーライト級前後だったからだ。不可は本当に減量がきつかったと振り返る。
「いつもは(試合前の)2週間くらい前から落とすけど、トーナメントに出ている時には1カ月半前から落としていました。結構ギリギリの食事でしたね。きつい減量をしていたからこそ結果を出したかった」
計量をクリアした直後に渇ききった喉に流し込む水ほど美味しいものは世の中にない。「最近うのは計量直後ではなく、水抜き中の飲む一杯の方が最高ですね。『これくらいは大丈夫かな?』といつつ口に含む水が一番美味しい。計量のあとだったら、どんなに食べても飲んでも構わない。僕にとって美味しいのは最初の一口目だけなんですよ。もういくらでも食べ物や飲み物を口にできるという時点で、っていたほどそれらに対する欲はなくなる」
水抜き中にはトマトジュースや甘酒を口に含むこともあるという。
「トマトジュースはカリウム(筋肉の弛緩を調整したり、利尿作用がある)が多い。一方、甘酒にはアミノ酸が結構入っていて、飲む点滴といわれている。そういう時に飲むものはコップ半分くらいでも幸せだといますね」

 

勝次戦以降、不可は一度も涙を流していない。気持ちを切り換えてKNOCK OUTとRISEのリングに上がり、2連勝中。相変わらずモチベーションも高い。KNOCK OUTのスタートによって、自分が本当に上に上がれるという可能性を感じているからだ。
「この舞台ができて、ここで結果を出せば、インパクトのある試合をすれば、上に上がれる。次につながると確信している」  (続編に続く)

(取材・構成 布施鋼治)

 

 

布施鋼治

1963年7月25日、札幌市出身。得意分野は格闘技。中でもアマチュアレスリング、ムエタイ(キックボクシング)、MMAへの造詣が深い。取材対象に対してはヒット・アンド・アウェイを繰り返す手法で、学生時代から執筆活動を続けている。Numberでは’90年代半ばからSCORE CARDを連載中。2008年7月に上梓した「吉田沙保里 119連勝の方程式」(新潮社)でミズノスポーツライター賞優秀賞を受賞。他の著書に「なぜ日本の女子レスリングは強くなったのか 吉田沙保里と伊調馨」(双葉社)「東京12チャンネル運動部の情熱」(集英社)、「格闘技絶対王者列伝」(宝島社)などがある。

 

「KING OF KNOCK OUT 2017 in両国」

◆日時
2017年12月10日(日) 開場13:00 開始15:00

両国国技館(http://www.sumo.or.jp/Kokugikan/

◆アクセス
〒130-0015 東京都墨田区横綱1丁目3-28
JR総武線 両国駅西口下車 徒歩2分
都営地下鉄大江戸線 両国駅下車 徒歩5分

◆入場料金(消費税込み)
砂かぶり席(椅子席)     ¥20,000 ※完売
アリーナA(桝席)     ¥12,000
アリーナB(桝席)      ¥8,000 ※完売
アリーナC(桝席)      ¥7,000 ※完売
2階スタンドA(椅子席)  ¥7,000  ※完売
2階スタンドB(椅子席)  ¥5,000
2階スタンドC(椅子席)  ¥3,000
小中高生          ¥2,000 ※当日のみ/要身分証
※当日券は各1000円アップ

◆チケット発売所

チケットぴあ    0570-02-9999(Pコード)
https://goo.gl/2HE3CP
ぴあカウンター、セブンイレブン各店、サークルKサンクス各店、ファミリーマート各店