ヒラリ、そしてまたヒラリ ー能天気なビキナーズラックー 金原正徳

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ヒラリ、そしてまたヒラリ ー能天気なビキナーズラックー 金原正徳

最近、まわりから体型が変わってきたとよくいわれる。
「身体の厚みは薄くなったけど、逆三角形のような体型になってきたかなと思います」
それはそうだろう。以前は毎日のようにやっていたMMA(総合格闘技)の練習も現在は趣味で1回のみ。あとはキックボクシングの練習に専念しているのだから。

今年7月、MMAファイターの金原正徳はキックボクサーとしてデビューした。舞台は渋谷のTSUTAYA O-EASTで行われた『ROAD TO KNOCK OUT』。試合形式は3分5ラウンド、しかもグローブを交わしたのは元新日本キックボクシング協会認定日本ライト級暫定王者の中尾満だった。
正直、荷が重いマッチメークのように思われたが、金原は1Rから約50戦のキックボクシングのキャリアのある中尾を左ジャブで攻めたてた。不思議と怖さはなかったという。
「MMAとは舞台が違うし。不良がアウトサイダーに出るような感じですかね。キックの環境も知らなかったし」

能天気なビキナーズラック。それでも、初めてのキックボクシングだったせいだろう。1Rが終わると、今まで味わったことがないような疲労が襲ってきた。金原の心情を見透かしたかのように、セコンドについた和術慧舟會HEARTS代表でMMA中継の解説者としても名を馳せる大沢ケンジは指摘した。
「ちょっとバタバタしすぎ。2R目からはもっとペースを落として」
それ以降も金原は試合の流れを掌握していたが、無理に倒しにいかなかったのはセコンドの指示に従ったからにほかならない。

「ジャブだけで倒そうと思ったけど、倒れなかった。一発さえもらわなければ勝てると思ったけど、相手の目は死んでいなかった。打たれても必ず打ち返してきた。それで、なかなか倒しにいけないというのもありました」 5Rが始まる直前、「いい加減に倒せよ」という野次が聴こえてきた。どんな立場のドの客から発せられたものなのかはわからなかったが、ラウンド開始のゴングが鳴ると金原は左ジャブから右アッパーを決める。
さらにパンチで追い打ちをかけ、粘る中尾に引導を渡した。足にケガをしているせいでキックを使うことはなかったが、デビュー戦とは思えぬ出来だった。
試合後、マイクを握った金原は饒舌だった。「初めてのキック挑戦、すごく怖かったですけど、試合していてすごく楽しかったです(中略)。次のリングはどこに上がるかわかりませんが、KNOCK OUTに呼んでもらえればまた上がりたいです」

金原の希望に大会プロデューサーの小野寺力も応えた。マイクを握ると、金原のキック挑戦が一度きりでないことを示唆した。
「日本の同じ階級のキックボクサーが必ず立ち上がるので楽しみにしてください」
その直後、大会のHPを通じて金原は「不可思選手とやってみたいです」と本音を漏らした。「今までKNOCK OUTを見させてもらって、不可思選手が一番印象に残ったんですよ。ああいうイキのいい若い選手はMMAでもいない」
金原の発言を受け、不可思はSNSで「一度勝ったくらいで、イケると思われちゃ困る」と釘を刺しつつ、対戦を受諾した。
「金原選手、やりましょう。 俺はいつでも、どこでも」
実現するまでに時間を要したのは、10月に不可思はRISEでライト級王座の防衛戦をしなければならなかったことに加え、金原には国内外からMMAの試合のオファーがいくつも舞い込んでいたからだろう。

最終的に両者の対決は12月10日の両国国技館大会に落ち着いた。金原は小野寺の熱意に押されたと打ち明ける。
「12月には国内外からMMAの試合のオファーももらったので、キックにするか、MMAにするかですごく悩んだ。でも、俺を一番必要しているのはKNOCK OUTだと思い、キックを選択しました」
12月に開催される格闘技イベントには特別な思いがある。それもそのはず、もう10年以上年末にはオールスター戦ともいえる格闘技イベントが開催されている。後述するが、金原も年末のビッグイベントのリングに何度か足を踏み入れた。
「12月に試合をやって勝って年を越す。選手としてはうれしいですよね」

不可思戦が決定すると、ファンからは様々な声が寄せられた。
「なぜMMAに出ないんだ?」
「MMAの試合を見たい」
否定的な声を耳にすると、あまりいい気持ちはしなかった。新しいことに挑戦する気持ちを純粋に応援してほしいと思った。
「別に遊びでキックをやっているわけではないですから」
それにしても、なぜキックに挑戦しようと思ったのか? 何を隠そう、金原はMMAファイターとして精力的に活動している頃から、キックボクシングのリングにも上がってみたいと思っていた。
「MMAはミックスト・マーシャルアーツというだけあって、柔術があって、キックがあって、レスリングがあり、それをミックスした競技じゃないですか。でも、実際の練習ではキックはキック、柔術は柔術という感じで個々にすることが多い。そうした中でキックの練習をしている時に試合にも出てみたいと思ったんですよ。正直、柔術はMMAを引退してからでもできるけど、キックはそんなに長いことできない。やるなら身体が動くうちに挑戦してみたいと思っていました」

昨年12月、以前主戦場にしていたDEEPでオーストラリアの選手と国際戦を行い、1RKO勝ちを収めた。長らく海外を主戦場にしていた金原にとっては実に2年8カ月ぶりの日本での試合だった。その理由を聞くと、自分を応援してくれたファンや同MMAプロモーションを仕切る佐伯繁代表に対する恩返しの意味が強かったと打ち明けた。
「身内でも海外の試合になれば応援にこれなかったので、日本で闘う姿を見せたかった」 (続編に続く)

(取材・構成 布施鋼治)

 

布施鋼治

1963年7月25日、札幌市出身。得意分野は格闘技。中でもアマチュアレスリング、ムエタイ(キックボクシング)、MMAへの造詣が深い。取材対象に対してはヒット・アンド・アウェイを繰り返す手法で、学生時代から執筆活動を続けている。Numberでは’90年代半ばからSCORE CARDを連載中。2008年7月に上梓した「吉田沙保里 119連勝の方程式」(新潮社)でミズノスポーツライター賞優秀賞を受賞。他の著書に「なぜ日本の女子レスリングは強くなったのか 吉田沙保里と伊調馨」(双葉社)「東京12チャンネル運動部の情熱」(集英社)、「格闘技絶対王者列伝」(宝島社)などがある。

「KING OF KNOCK OUT 2017 in両国」

◆日時
2017年12月10日(日) 開場13:00 開始15:00

両国国技館(http://www.sumo.or.jp/Kokugikan/

◆アクセス
〒130-0015 東京都墨田区横綱1丁目3-28
JR総武線 両国駅西口下車 徒歩2分
都営地下鉄大江戸線 両国駅下車 徒歩5分

◆入場料金(消費税込み)
砂かぶり席(椅子席)     ¥20,000 ※完売
アリーナA(桝席)     ¥12,000
アリーナB(桝席)      ¥8,000 ※完売
アリーナC(桝席)      ¥7,000 ※完売
2階スタンドA(椅子席)  ¥7,000  ※完売
2階スタンドB(椅子席)  ¥5,000
2階スタンドC(椅子席)  ¥3,000
小中高生          ¥2,000 ※当日のみ/要身分証
※当日券は各1000円アップ

◆チケット発売所

チケットぴあ    0570-02-9999(Pコード)
https://goo.gl/2HE3CP
ぴあカウンター、セブンイレブン各店、サークルKサンクス各店、ファミリーマート各店