回り道をしてきた男 —遅咲きの星—(続編) 勝次

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回り道をしてきた男 —遅咲きの星—(続編) 勝次

 トーナメントを勝ち抜く過程で、勝次は″激闘男″の称号を手にした。森井との決勝も激闘になる予感があるかと水を向けると、勝次は苦笑いを浮かべながら口を開いた。
「激闘をしたいかどうかと聞かれたら、したくない。誰が相手であっても、ワンサイドで勝つのがベスト。誰もが1Rで勝ちたいと願っている。そのくらいのイメージは抱いているけど、この大会は今までとは注目度が違う。KNOCK OUTで勝ったらのし上がれる。出場する選手は誰もがそう思っているので、そう簡単には倒れない」
なるほど。選手のモチベーションを高める要素が詰まっているからこそKNOCK OUTは激闘や名勝負が多いのか。成り上がりたいという思いは、いつもより相手との距離を縮める。勝次は、KNOCK OUTは本当に殺るか殺られるかだと説く。
「攻めない後悔より攻めて後悔した方がいい。仮に僕がフルパワーで攻めまくって、その中でカウンターを食らったとしても、文句を言ってくる人はいないと思う。反対に僕がちょっとでも逃げ腰になったり、ダウンを奪ったあとに逃げるような素振りを見せればファンは減るんじゃないですか」
勝ちに徹するより、最後まで倒しにいく。それがキックボクシング本来の醍醐味であり、それをKNOCK OUTは蘇らそうとしている。勝次は、その使命を背負っていると語気を強めた。
「その方がKNOCK OUTの名前を売れるし、キックボクシングという素晴らしいスポーツの名前を高めることもできる。純粋なキックを変えるチャンスはKNOCK OUTにしかない」
VS森井が、どんな激闘になるかは想像することができない。
「だから試合内容はあまりイメージしていない。自分のパフォーマンスを最大限に発揮して、お客さんの半分以上がスタンディングオーベーションをしてくれるような試合をしたい。お客さんの声援で会場が揺れる中、僕はレフェリーに右手を上げられている。毎日そういうイメージはしています」
取り立てて森井を意識した練習をしているわけではない。勝次は自分の持っているパフォーマンスをしっかり発揮できるということに集中して調整に励む。
「あのレベルの選手に合わせて練習していたら、自分も同じレベルになってしまう。格の違いを見せつけて優勝します」

──格が違う?

「自分の中では違う。他の7名の出場メンバーと比べたら、純粋にキックボクシングをやってきたのは僕だけという自負がある。やってきたことが違う。そこには自信を持っています」
勝次に森井が言っていたこと──「本人は否定すると思うけど、勝次選手とは似た者同士だと思う」というメッセージを伝えた。
勝次は素直に同意した。
「やっぱり森井選手も伝統を背負っている。ウチのジムは(日本で最古のキックジムとして知られる)目黒ジム系列なのに対して、森井選手は藤原敏男さんの弟子じゃないですか」
現役時代、藤原は外国人選手として初めてムエタイ王者になったことで有名になった。当時所属していたのは″鬼の黒崎″こと黒崎健時が主宰していた目白ジム。70年代には何度か沢村との直接対決の機運が高まったが、結局夢の対決が実現することはなかった。
しかも、それぞれのジムは所属していたプロモーションが異なる。目黒ジムは日本キックボクシング協会(現在の新日本キック協会の前身)なのに対して、目白ジムは全日本キックボクシング連盟だった。
長い間、日本のキックの歴史は日本キックと全日本キックの対立図式で成り立っていたことを忘れてはいけない。勝次VS森井は、キックの源流を辿る旅でもある。
「50年という歴史を越え、禁断の目黒VS目白対決が行われる。だから僕ひとりで頑張ってきたというより、自分が背負った伝統も意識したい。僕はジムの先輩の意志も引き継いで、それを課題として課してきたつもり。キック発祥のジムに所属する僕が日本キック協会系最強を証明してやりますよ」
決戦の舞台となる両国国技館には一度だけ足を踏み入れたことがある。7~8年前、ポンサックレックが内藤大介を挑戦者に迎えて世界王座の防衛戦をやった時、ポンサックレック側の大勢の取り巻きのひとりとして一緒に花道を行進したことがあるというのだ。
「控室が(大相撲の)仕度部屋でビックリしました。まさか自分が両国で試合をやるなんて、その時には夢にも思わなかったですけど」
大相撲の聖地で、回り道をしてきた男は人生を変えることができるか。

(取材・構成 布施鋼治)

布施鋼治

1963年7月25日、札幌市出身。得意分野は格闘技。中でもアマチュアレスリング、ムエタイ(キックボクシング)、MMAへの造詣が深い。取材対象に対してはヒット・アンド・アウェイを繰り返す手法で、学生時代から執筆活動を続けている。Numberでは’90年代半ばからSCORE CARDを連載中。2008年7月に上梓した「吉田沙保里 119連勝の方程式」(新潮社)でミズノスポーツライター賞優秀賞を受賞。他の著書に「なぜ日本の女子レスリングは強くなったのか 吉田沙保里と伊調馨」(双葉社)「東京12チャンネル運動部の情熱」(集英社)、「格闘技絶対王者列伝」(宝島社)などがある。

 

「KING OF KNOCK OUT 2017 in両国」

 

◆日時
2017年12月10日(日) 開場13:00 開始15:00

両国国技館(http://www.sumo.or.jp/Kokugikan/

◆アクセス
〒130-0015 東京都墨田区横綱1丁目3-28
JR総武線 両国駅西口下車 徒歩2分
都営地下鉄大江戸線 両国駅下車 徒歩5分

◆入場料金(消費税込み)
砂かぶり席(椅子席) ¥20,000 ※完売
アリーナA(桝席)    ¥12,000 ※完売
アリーナB(桝席)    ¥8,000 ※完売
アリーナC(桝席)    ¥7,000 ※完売
2階スタンドA(椅子席)  ¥7,000 ※完売
2階スタンドB(椅子席)  ¥5,000 ※完売
2階スタンドC(椅子席)  ¥3,000
小中高生         ¥2,000 ※当日のみ/要身分証
※当日券は各1000円アップ

◆チケット発売所

チケットぴあ 0570-02-9999(Pコード)
https://goo.gl/2HE3CP
ぴあカウンター、セブンイレブン各店、サークルKサンクス各店、ファミリーマート各店